デザインとライフスタイルの国際展示会「メゾン・エ・オブジェ」。2024年1月展が2024年1月18日から1月22日まで、パリ・ノール・ヴィルパント見本市会場にて開催された。1994年にはじまり、今年で30周年となるメゾン・エ・オブジェ。毎年1月と9月の年2回開催で、世界中から感度の高い出展者・来場者が集まり、華やかさとトレンド発信力を持つことから、デザイン・インテリア界のパリコレとも言われている。
今回の来場者数は、昨年の1月展よりも5%増加して7万668名、出展ブランド数は9%増加し2,516。コロナ前の2020年1月展と比べると来場者数は8割程、ブランド数は9割弱にとどまるが、着実な回復を見せた。来場者では特にプリスクリプターと呼ばれる、空間やインテリアのデザイナーの来場者数が8%増加した。
新たに参加したブランドは昨年の1月展より25%増加し648社。これは2020年より6%多い数字で、新たなビジネスの発生と展示会への期待の高まりを示す数字だろう。日本からの出展者は90ブースで、開催国のフランス以外で5番目の多さとなった。2020年はトップ5に入っていないので相対的な存在感を増している。
本記事では、コロナ禍を超えて熱気が戻ってきたメゾン・エ・オブジェについて、その概要と共に、日本からの出展者を紹介する。
※タイトル写真:「WHAT’S NEW?IN DECOR」より ©Anne-Emmanuelle Thion
新たなテクノロジーが可能にする、自然との新たな関係構築
今回の展示会のインスピレーションテーマは「TECH EDEN(テック・エデン)」。“未来的なバイオフィリア(自然愛)にフォーカスし、新たなウェルビーイングの世界、テクノロジーと自然が調和を取り戻した世界に誘う”というコンセプトだ。
特に印象的だったのはエリザベス・ルリッシュがキュレーションした「WHAT’S NEW?IN DECOR」。緑、青といった自然を想起させる色にあふれた幻想的で大胆な空間は、没入感がありテーマを体感させるに十分なものだった。
毎回注目を集める、ハイエンドなデコレーションを紹介する「Signature」エリア。その入口の一つには、創業260周年のクリスタルガラスメーカー「バカラ」が製品やシャンデリアと共に「Alchemy」という体験型の大型映像を展示した。
もう一つの入口には、今回の展示会のデザイナー・オブ・ザ・イヤー、2024年パリ五輪の聖火トーチをデザインしたフランス人デザイナーのマチュー・ルアヌールによる「Outonomy(自律のAutonomyのもじりであり、Out + Economyで脱・経済という意味と推測)」が展示された。これは展示会テーマの「TECH EDEN」を受け、自然と共生する近未来の住居のあり方をプレゼンテーションしたもの。
バカラという歴史・伝統と、最新技術による近未来という対極がそれぞれの入口に配置されていた。
「TECH EDEN」を具体的に見せる展示の一つ「INSPIRE ME!」は、「Well-Being Cafe」「Gym Station」「SPA Room」の3エリアから構成された。たとえばWell-Being Cafeは「カフェは単に食べて人と会う場所ではなく、拡張された美の震源地となる」というコンセプトで、これからのカフェに期待されるあり方を提示した。
若手デザイナーを紹介する「Rising Talent Awards」では、選出された7人が「TECH EDEN」を受けて手仕事と技術革新を融合させた作品を展示した。技術革新によってハードルが下がった少量生産のものづくり、環境問題への対応からますます求められるさまざまな素材のリサイクル、そして手づくりや工芸的な手法が注目されている印象を持った。
2019年以来の現地取材となったメゾン・エ・オブジェだが、会場全体の雰囲気はコロナ前とまったく変わらない印象を持った。新たなトレンドや次世代のデザイナー、活躍している出展者を世界的な視野で一望できる国際展示会の面白さを改めて感じることができた。
次のページでは、数多くの日本の出展者から、6ブランドについて紹介する。
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