花巻おもちゃ美術館
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岩手県花巻市にある、岩手県産材を使った体験型木育施設「花巻おもちゃ美術館」。東京おもちゃ美術館が企画総合プロデュースしたオリジナルの空間に、遊具と世界中のおもちゃがそろったミュージアムです。
今回、設計を担当したFy desgin studioの藤原洋平さんに、空間のコンセプトや演出などについてお伺いしました。
■背景
老朽化により2016年に閉店したマルカン百貨店に代わり、地元住人や地域の拠点となるよう新たな文化の発信地として計画されたのが、「東京おもちゃ美術館」の姉妹館「花巻おもちゃ美術館」プロジェクトです。
オーナーの小友木材店という地元民間企業の旗振りで、企画総合プロデュースを担う東京おもちゃ美術館を筆頭としたプロジェクトチームを結成。2020年7月、マルカンビルとして再出発を果たしたビルの2階に同館はオープンしました。
■コンセプト・手法
おもちゃ美術館は、親と子、そして多世代間のコミュニケーションを世界中の玩具によって実現するための「遊べるミュージアム」です。
子育て支援施設の側面を持ち合わせた木質化空間のテーマパークであるため、必要になったのは、乳幼児への安全性と長時間滞在できる居心地の良さでした。加えて、地域の新たな観光資源としての側面も求められたため、商業施設として競争力のある魅力と世界観の構築も条件となりました。
そこで、1970年代竣工の鉄筋コンクリート造の特徴を最大限活用することに着目しました。天井が低く、コンクリートの粗さと冷たさのある質感に対し、杉フローリングを中心とした木材とのコントラストを生み出すために、梁上はすべて既存のまま残しています。
メインの壁材には、粗さと温かみをあわせ持った白塗装の木毛セメント板を採用し、コンクリートと木材のつなぎ役ととすることで、過剰な演出やコントラストが生じないように配慮しました。
また、竣工当時の時代の特徴である柱の多さを逆手にとり、すべての柱間に大きなアーチ型の開口を設け、各エリアを緩やかにつなぎました。それにより、次々と現れるアーチのレイヤーによって、実際の面積以上の奥行と広さの印象を生み出せました。
特に針葉樹に言えることですが、木材や木質化された空間は柔らかさや温かみといった魅力がある一方で、暑苦しさや野暮ったさが勝ってしまう場合があります。そこで、観光施設として商業的な競争力を保つために、木材の活用に際しては迫力や洗練性を意識してデザインを進めました。
自宅のリビングに居るような普遍的で飽きの来ない意匠性を保つことに注意しながら、ここでしか見たり触ることができないインパクトを演出しています。館内の中央部の柱を覆うように設置した「削り出しの巨木オブジェ」は最もそれを体現しており、名実ともに空間のシンボルとなっています。
所在地 | 岩手県花巻市上町6-2 マルカンビル2F |
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事業者 | 小友木材店 |
総合プロデュース | 東京おもちゃ美術館 |
建築・内装設計・監理 | 藤原洋平/Fy desgin studio、渋谷大輔/Studio Syncroll |
企画協力 | 川上素子/設計工房アルファ |
設計協力 | 菅建築設計事務所 |
照明設計 | 渡邊聡子、古川愛子/大光電機 |
玩具 | 株式会社アプティ |
施工 | 伊藤組 |
延床面積 | 937.67m2 |
竣工日 | 2020年7月 |
撮影 | 藤井浩司/TOREAL |