ルミネを彩る、非日常なアート作品。「LUMINE meets ART...

LUMINE meets ART AWARD,アート,映像・写真

「アートのある毎日」を提案するプロジェクト「LUMINE meets ART PROJECT」に取り組んでいるルミネ。新宿ルミネ館内に展示するアート作品を募集する公募企画「LUMINE meets ART AWARD 2019-2020」の受賞作品展が、9月15日から9月30日まで開催されています。受賞作品のほか、審査員が推薦するアーティスト4名も加わり、ルミネ・ニュウマンの6つのウィンドウを彩っています。

この記事では、次世代のアーティストを応援するとともに、買い物にきた方がルミネを通じて新たな才能と出会えるという「LUMINE meets ART PROJECT」について、また、今回展示された6作品と今後の活躍が期待されるアーティストをご紹介していきます!

いつものルミネから、ちょっとした感動と非日常を

美術館やギャラリーではなく、いつものルミネでアート作品を見ることができる「LUMINE meets ART AWARD(以下、LMAA)」。2013年に若手アーティストの発掘と支援を目的にスタートし、7回目を迎える今回の募集は2019年10月15日から2020年1月5日まで行われ、計433点の応募が集まりました。

展示では、その中から選ばれたグランプリと準グランプリの2点のほか、審査を担当したギャラリストの小山登美夫さんや、スマイルズの遠山正道さんなどの審査員による推薦アーティスト4名の作品も一緒に展示されています。

「LUMINE meets ART AWARD 2019-2020」授賞式の様子

「LUMINE meets ART AWARD 2019-2020」授賞式の様子

【グランプリ】「乾燥地帯の街路広告」藤倉麻子さん

グランプリを受賞したのは、アーティストの藤倉麻子さん。工業製品やインフラストラクチャーが自律を獲得し、運動する様子を描き出す3DCG作品を多く手がけています。今回、グランプリ受賞に際して作品のコンセプトや特徴、受賞の感想などについてうかがいました。

乾燥地帯の街路広告

グランプリ受賞作品「乾燥地帯の街路広告」、映像内のイメージカット

――普段の作風や、テーマとして考えていることについて教えてください。

藤倉麻子さん(以下、藤倉):おもに現代の都市の基盤やインフラストラクチャー、工業製品が人の手を離れて自走していくようなシーンを3DCGでつくっています。そういったものが一度街に設置されたあと、デザインされた機能を果たしながらも別の独立した時間をまとっていくような、“もの”として存在していくことに興味があって制作をしています。

作品のモチーフになったり考えたいと思う要素があるのは都市だったり、田舎の田んぼ道に橋脚がある風景とか、自然と都市の産物がくっきりひとつひとつのオブジェクトのように見える場所ですね。特に建設途中の高速道路や途中まで橋が架かっている様子などは、ものが機能する前なのでマテリアルや存在感が強く感じられます。耐久性があって、私が死んだ後も残るような、想定されている時間が長いものに思いを馳せることが多いです。

――グランプリを受賞した作品「乾燥地帯の街路広告」はどんな作品ですか?

藤倉:メインのモチーフは街頭にあるような広告物や野立て看板、電工サイネージ掲示板、タペストリーなどです。そういった広告物は普段あらゆる場所にありますが、それらは自分が主体的に見ることを目的とした情報ではないことが多く、そのこと自体について立ち止まって考えることは少ないと思います。

藤倉麻子さん「乾燥地帯の街路広告」

「乾燥地帯の街路広告」ショーウィンドウに展示された様子。両脇には映像が流れるモニターがあり、中央には道路標識や旗などが並ぶ。映像内では商業施設でよく見かける言葉やモチーフがたくさん登場します(展示場所:ルミネ新宿 ルミネ2-2F スタンニングルアー横ショーウィンドウ)

藤倉:私には、看板やサイネージなどが“もの”として存在しているのに、人から意識されなくなっていることでだんだん都市に埋没していくように感じられます。そして、それらが独立したあり方や存在感を発している気がして、その独特な存在感をショーウィンドウの中に詰め込むことで強調し、「看板を見る」「サイネージを見る」というようなことを改めて提示したいと考えました。買い物に来た方などがふと見た時に、その人の中で言語化はできなくても、“ものを見る”ということについて、無意識にでも変化の兆しのようなものを芽生えさせられたらいいなと思っています。

――応募したきっかけは何だったのでしょうか?

藤倉:最近、今回私がテーマとした広告物や看板、旗などに興味があって、そういった“すでにあるもの”がまとう時間やもののあり方、そしてそれに対しての自分の気持ちについて考えたいなと思い、LMAAならそういうテーマに適した展示ができるんじゃないかなと。ホワイトキューブではなくて、たくさんの人が目の前を通り過ぎる場所であるルミネのウィンドウに作品を設置してみたいと思い、応募しました。

藤倉麻子さん「乾燥地帯の街路広告」

映像にもたくさん登場する道路標識は、今回実際にも展示。藤倉さんいわく実際にどこかの道で使われていたものだそう

――特にこだわった点や時間をかけたところは?

藤倉:LMAAの大前提ではありますが、ショーウィンドウという空間に何をどう配置するのかという外観のインストールの部分に時間をかけました。映像内にはこの作品を展示しているショーウィンドウのようなものが映るシーンもあるんですが、実際のショーウィンドウの中にもモニターがあって映像が映っているし、映像と現実が地続きではないけれど並べて見ることができて、でもたどり着けないないと感じられるような世界や場所を描くことに一番力を入れました。

今年に入ってから特にもの自体や素材に向き合う時間がほしいなと思っていたので、映像内に出てくる道路標識や旗、マネキンなどの立体作品を今回手がけられたことも、すごくいい機会でした。

――今後やっていきたいことや表現について教えてください!

藤倉:映像表現の技術について技術を勉強したり幅を広げたいなという気持ちは第一にありますが、さまざまな素材や平面・立体作品にも取り組んでいきたいと思っています。扱うメディウム(媒体)を変えることでよりそれについて考えて実験していき、今後大きなテーマについて考えの助けになったりやりたいことが見えてくると思います。

【準グランプリ】「転生 Animals」髙瑞 KOHSUIさん

準グランプリに選ばれたのは、彫刻家・髙瑞/KOHSUIさんの「転生 Animals」。「変身」や「野生」をテーマに作品を制作しており、六本木アートナイトや瀬戸内国際芸術祭などにも出展されています。今回の作品は、髙瑞さんご自身の野生動物になりたいという変身願望から着想されたもの。日常的な置物を改造し、野生動物の瑞々しさや荒々しさ、尊さを加えることを試みた作品と、自作の着ぐるみが展示されています。

転生 Animals/髙瑞 KOHSUIさん

自作したという着ぐるみ3体は、どこかほっとしたような表情もありつつ、こちらをじっと見ているようにも思えます(展示場所:ルミネ新宿 ルミネ2-2F サラベス横ショーウィンドウ)

転生 Animals/髙瑞 KOHSUIさん

着ぐるみのまわりは、デコレーションが施された犬の置物が囲んでいます

作品の根底には、アイデンティティや社会的なしがらみから逃れたいという自身の変身願望と、人間の地球環境に対する放漫さへの怒りがあるといいます。

【審査員推薦展示】伊藤彩さん

審査委員長の小山登美夫さんが推薦したのは、現代美術作家の伊藤彩さんによる作品。本作では、脱力感やゆるさを持つキャラクターたちが住む夢の世界を表現しています。伊藤さんは一度立体のジオラマをつくってそれを撮影し、絵画にする「フォトドローイング」という珍しい手法を使い、どこかリアリティのある陰影や物質感をつくりあげています。

伊藤彩 作品

ゆるっとした世界観ながらも、陰影や色合いの表現が強烈に印象に残る作品(展示場所:ルミネ新宿 ルミネ2-1F 甲州街道ショーウィンドウ)

伊藤彩 作品

小さい頃からショーウィンドウを眺めるのが好きだったという伊藤さん。制作するにあたり特に考慮したことについて、「昼は縁側で外の景色を眺める猫のような、夜は暗闇にふわっと灯る家明かりのような作品・展示になればいいなと思います」と、コメントしています。ショーウィンドウの手前にあるジオラマと、そのジオラマをもとに描かれた奥の絵が何とも不思議な気配を漂わせています。

【審査員推薦展示】「自連車」東弘一郎さん

審査員の遠山正道さんが推薦したのは、自転車と金属を組み合わせて、動く立体作品を制作している東弘一郎さんによる作品「自連車」。ショーウィンドウの中で、放置自転車のタイヤを一斉に動かすという大型作品で、忙しなく人々が行き交い、容赦ない消費と躊躇なくすべてを受け入れる新宿で、ローカルな視点を想起させ、回転の動きに思いを馳せるような作品になっています。

東弘一郎 自連車

10mほどのショーウィンドウの中では、1分間隔でカラカラと自転車の車輪が回ります(展示場所:ニュウマン新宿 NEWoMan ART wall.[新宿駅ミライナタワー改札横])

東弘一郎「自連車」

モーターで動く先頭の自転車に連動して、8つのタイヤが回転するという本作品。東さんは作品について、「私にとってこの自粛期間は、いろいろなことが空回りしているように感じます。ペダルが回転し、タイヤが回転しているはずなのに、地に足をつけずどこにも行くことができません。タイヤの接点は地面ではなく、次のタイヤ。この自転車が想像力という名の乗り物として多くの人の心に問いかけ、『人間らしい生き方』を再考したいのです」と、コメントしています。作品近くではPV映像も見ることができるので、ぜひそちらにもご注目ください。

【審査員推薦展示】黒川知希さん

審査員の永井秀二さんが推薦したのは、画家の黒川知希さんによる作品。湾曲したショーウィンドウの中には、どこか懐かしい昭和のアニメーションのようなタッチと色彩を使った、見る人の記憶を揺さぶるような作品が展示されています。

黒川知希 作品

人通りが多いショーウィンドウの中にはアニメーションのような描画の人物2人が並び、道行く人にさまざまな感情を起こさせそう(展示場所:ルミネ新宿 ルミネ2-1F 東南口ショーウィンドウ)

黒川知希 作品

書籍やCDジャケットなどのイラストや、ファッション関連のデザインを多く手がけている黒川さん。2008年以降は絵画の制作をおこなっており、ショーウィンドウでの展示は今回が初の試みだそうです。作品と場所、異質感のようなものをメインテーマに制作されました。

【審査員推薦展示】クラークソン瑠璃さん

審査員の加藤育子さんが推薦したのは、言葉とフェミニズムの関わりを物語性の高い絵柄で描く、クラークソン瑠璃さん。作品は現代の生身の女性の声を描きたいというテーマでつくられました。ショーウィンドウに飾られたのは、大小さまさまな刺繍作品。真ん中あたりに飾られた作品には「主婦」「妻」「世帯主」「婚活」「テレワーク」といった言葉が縫われています。

クラークソン瑠璃 作品

展示場所:ルミネエスト新宿 新宿駅東口ロータリー沿いショーウィンドウ

作品に寄せてクラークソンさんは、「『言葉』には、敗北し続けている。同じ言葉でも状況や人によって、まったく違う意味に受け取られ、それによって憎しみにも好意にも私たちの感情は傾いてしまう。なんてパワフルで、制御不能な魔力だろう。不生命の『言葉』は生身の人間が真っ向から勝負しても叶わない。だから私は『言葉』に布と糸で『身体』を与える。そうすることでせめて、魔力が弱まらないだろうか?針で刺すことで、ヤツらは参らないだろうか?」と、コメントしています。

縫われた言葉について改めて考えさせられるメッセージ性が強い作品ですが、純粋に刺繍作品としてとても丁寧にかつ力強く細部まで縫われていて、その場でじっくりと見てほしい作品です。

クラークソン瑠璃 作品

今回展示された6つの作品はどれも作風が違いますが、共通して感じたのは、実際にルミネやニュウマンにインストールされることによって効果を発揮するものばかりだということ。感染症の影響でじっくりと美術館やギャラリーに行きづらいなと思う方や、わざわざ作品を見に行くには敷居が高いという方は、いつものルミネにふらっと立ち寄り、作品たちのメッセージを受け取ってみてはいかがでしょうか。展示は9月30日までなのでお早めに!

■LUMINE meets ART AWARD 2019-2020 The Award Winner’s Exhibition
日時:2020年9月15日(火)~9月30日(水)
会場:ルミネ新宿、ルミネエスト新宿、ニュウマン新宿
https://www.lumine.ne.jp/lmap/award/20200908/exhibition-2020/

取材・文:石田織座(JDN)

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