建築出身のデザイナー3人と考える、「プロセスとデザイン」とは? 太刀川...

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エイトブランディングデザインとJDNが共同開催する「みんなでクリエイティブナイト」は、「◯◯とデザイン」(毎回「〇〇」のテーマが変わります)をテーマに、 社会や⼈の⼼理にデザインがどのように作⽤するのかを問い、デザインの役割や価値について、“みんな”で考えていくイベントです。ブランディングデザイナーの⻄澤明洋さんをファシリテーターに、各回のテーマにあったクリエイター2組をゲストに迎え、さまざまな角度からテーマを掘り下げていきます。

2019年12月24日(火)、クリスマスイブの夜に開催された第3回目のゲストは、NOSIGNER代表でありデザインストラテジストの太刀川英輔さんと、studio-L代表を務めるコミュニティデザイナーの山崎亮さん。2人はどちらも建築の教育を受けながら、他分野で活躍されているクリエイターという共通点があります。

2019年9月24日に刊行された西澤さんによる新著『アイデアを実現する建築的思考術』の中で、西澤さんは2人に「建築的思考法=アーキテクチュアル・シンキング」についてインタビューを実施しています。この日は、同書の中で語られた「デザインを生み出すまでのプロセスをいかにデザインするか」を掘り下げるべく、会場からの質問に3人が答えるかたちでトークセッションが行われました。

クリスマスイブらしく、サンタ帽姿で登場した3人。乾杯の後は、太刀川さんの自己紹介からスタートです!

「みんなでクリエイティブナイト」乾杯の様子

デザインを関係性からを導いていく 太刀川英輔(NOSIGNER代表/デザインストラテジスト)

建築の「ゲシュタルト崩壊」から、デザインへ

太刀川:僕は学生時代は建築学部で、建築家の隈研吾さんの研究室に所属してました。 いまはデザイナーとして活動していますが、学生時代は建築家になりたかったんですよね。で、その頃にいい建築と悪い建築の違いってなんだろうなと考えていたんです。

<strong>太刀川英輔</strong><br /> NOSIGNER代表。デザインストラテジスト。慶應義塾大学特別招聘准教授。デザインで美しい未来をつくること(デザインの社会実装)発想の仕組みを解明し変革者を増やすこと(デザインの知の構造化)この2つの目標を実現するために社会的視点でのデザイン活動を続け、SDGsに代表される社会課題における共創から多くのプロジェクトを実現。グッドデザイン賞金賞、アジアデザイン賞大賞(香港)など100以上の国際賞を受賞し、また審査員を務める。発明の仕組みを生物の進化から学ぶ「進化思考」を提唱し、変革者を育成する活動を続けている。主な仕事にOLIVE・東京防災(東京都)YOXO(横浜市)横浜DeNAベイスターズなど。

太刀川英輔
NOSIGNER代表。デザインストラテジスト。慶應義塾大学特別招聘准教授。デザインで美しい未来をつくること(デザインの社会実装)発想の仕組みを解明し変革者を増やすこと(デザインの知の構造化)この2つの目標を実現するために社会的視点でのデザイン活動を続け、SDGsに代表される社会課題における共創から多くのプロジェクトを実現。グッドデザイン賞金賞、アジアデザイン賞大賞(香港)など100以上の国際賞を受賞し、また審査員を務める。発明の仕組みを生物の進化から学ぶ「進化思考」を提唱し、変革者を育成する活動を続けている。主な仕事にOLIVE・東京防災(東京都)YOXO(横浜市)横浜DeNAベイスターズなど。

たとえば、雑誌で見てかっこいいなと思った建築が、実際に見に行ってみたらちょっとがっかりしたり、逆になんの期待もせずに入ったカフェが場所としてすごく愛されていることにめちゃめちゃ感動したりすることがあって。そんな風に、すごくいい空間だなって思える場所は、必ずしも外側のデザインの話じゃなくて、その空間が発している何かがあるんだなと思ったんです。たとえばその空間で流れている音楽であったり、そこにいるひとたちとの関係性などによって、心地いい状態とそうではない状態があるということが、建築を考えるうえですごく重要だなあということを、その頃から考えるようになったんです。

そうやって部屋の中にあるエアコンや照明、椅子などを見渡して「これも建築なのか?」とか考えたりしてて。空間の中にあるそれぞれが関係を持っているから、どこからが建築なのか分からなくなってくるような、ゲシュタルト崩壊が起こったんです。さらに、大学院時代にいろいろ考えていたら、小さいものもつくれないのに、建物みたいなでかいものをいきなりつくるのが怖くなってきて。そこで、まずは小さいものをつくろうと思ってプロダクトデザインをはじめました。

太刀川さんが大学院時代に制作したテーブル

太刀川さんが大学院時代に制作したテーブル

そうやって小さいもののデザインをするようになってから、関係性をつくる力があるグラフィックデザインに惹かれるようになりました。ものの表面すべてはグラフィックにできますし、しかも意味をダイレクトに伝えられることがおもしろくて。

大学4年の時の卒業制作は、新宿中央公園を改造するというものでした。グラフィックデザイナーじゃないのにグラフィック好きそうでしょ、これ(笑)。

太刀川さんの卒業制作

太刀川さんの卒業制作

めちゃめちゃCG描きたいっていう感じが伝わると思うんですが(笑)、この頃は「MVRDV」とか、グラフィカルに建築を表現するひとたちがいっぱいいて。「ATTIK」っていうグラフィックデザインのチームだったり、「noise4」をプレゼンテーションの参考にしたり。 そういうものを「めっちゃかっこいいぜ」って思いながら見ていたら、だんだんタイポグラフィにも興味が芽生えはじめていって。

そんな学生時代だったので、ゲシュタルト崩壊的にどこまでがデザインで、どこまでが建築なのかが分かんなくなっていくうちに、グラフィックデザインが超好きだからやってみたくなったんです。そこで、「何か仕事ない?」って友だちに聞いたら、東大の先端科学技術研究センターのオープンキャンパス用の冊子を作ることになって。実際4日後がオープンキャンパスだったので「マジか」みたいな感じだったんだけど(笑)、実際に仕上げて持っていったら広報のひとがめっちゃ驚いて。そんな流れで、先端科学技術研究センターのデザインディレクターになったんですよ。

先端科学技術研究センターのサインデザイン

先端科学技術研究センターのサインデザイン

そんな感じで大学院時代に独立したんですよね。で、そのまま覆面レスラー的に「NOSIGNER」と名乗って活動をはじめたんです。

勘違いから生まれた「NOSIGNER」の由来

太刀川:「NOSIGNER」という名前の由来について話すと、デザインの語源って、ラテン語で「designare(デジニャーレ)」って言葉らしいんです。ざっくり説明すると、サインにすること、かたちや記号にすることっていう意味で。 正確に表記すると「デ・ザイン」なんですが、最初はサインを否定する意味なんだと勘違いして、かっこいいなと思ったんだけど、実はサインそのものだったということが分かって、あとでがっかりしたんです(笑)。

でも、がっかりした理由を考えたら、建築を学んでいたコンテクストが導いてくれたからなんだと思ったんですよ。要するに、かたちじゃない状況がかたちを導いてくれるところがあって、この導かれる関係性みたいなことに目を向ければ、いいものができるんだっていう感覚を、建築家は共通して持ってると思うんですね。だから、建築家はかたちではなく、周囲にある関係を見ることが多いんです。「デ・ザイン」の「デ」が否定形だとしたら、「サインじゃないことがサインの本質」という意味かもしれないと、そこがかっこいいなと思ったんですよね。実際にはそうじゃなかったんですが、じゃあその反対のことを言おうと思って、「ノザイン=NOSIGN」という言葉をつくってみた。NOSIGNをやる人としての「NOSIGNER」なんです。

NOSIGNERとして活動しはじめた当初は、名前を名乗っていなかったのですが、東日本大震災後の「OLIVE(オリーブ)」というプロジェクトでは、さまざまな人々と一緒につくる必要があったので、そのときに名前を明かそうと決めました。それは、のちの東京防災に繋がっています。

災害時に有効な知識を集めて共有するwikiサイト「OLIVE」は、その後「いのちを守るハンドブック」として書籍化された。

災害時に有効な知識を集めて共有するwikiサイト「OLIVE」は、その後「いのちを守るハンドブック」として書籍化された。

電通とともにNOSIGNERがプロジェクトディレクションを指揮した「東京防災」。東京都に住む640万世帯の全てに配布された。

電通とともにNOSIGNERがプロジェクトディレクションを指揮した「東京防災」。東京都に住む640万世帯の全てに配布された。

最近になって、ようやく1作目の建築ができました。これは富士山の近くにある「幸ハウス」という病院に付随するコミュニティ施設で、がん患者のための施設「マギーズ・センター」ともコラボしています。ここはあらゆる患者のための家みたいな空間で、コミュニティが生まれるための施設なんです。

幸ハウス

幸ハウス

NOSIGNERという名前が決まったとき、あらゆるデザインを関係性から導いていくことに、僕の中で腹が決まった感覚があるんです。見えない関係性を紐解いていくことでかたちが出現すること、その機会に出会っていきたいなと。僕はなるべく社会に意味がありそうなことをやるぞと心に誓ってるので、社会課題の解決のために、どんな関係を紡ぐべきなのか、そのことに正直でいながらデザインしていきたいと思っています。

次ページ:コミュニティを徹底的に信じ尽くすということ 山崎亮(studio-L代表/コミュニティデザイナー)

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